不動産投資家の自分流投資戦略(シリーズ第3回)・・・江戸川 京介

「日本の都市部にある不動産が持つ底力と魅力について」

今回は外国不動産と比較した時における、日本の都市部にある不動産が持つ魅力について、私の考え方を紹介したいと思います。

外国と比べた時の日本の不動産の魅力


(1)良好な治安と整備された豊富なインフラ

 これまでの日本においては、欧米の文化を自分たちのライフスタイルに取り入れることによって生活を豊かにしてきました。 そういう中で、欧米の魅力ばかりがクローズアップされ、日本の良さに気づかないことがあります。
そのような中、私が外国を旅行した際、その都度日本の魅力を再確認することがあります。 それは、安全な治安と十分に整備されたインフラです。治安については市街地を一人で歩いていても安全なうえ、 夜も多くの街灯やネオンが存在していることから、夜も安心して活動することが出来ます。このことは、 外国のように、安全のため夜間外出を控えたり、タクシーなどの移動に頼らなくてはならないといった 隠れたコストが日本には存在しないということを意味すると思います。
またJRや地下鉄、バスといった公共交通機関も安価かつ本数も多く、 時間が正確であるため、低い移動コストという点では大きなメリットがあると思います。
このように、外国旅行をする度に感じることは、 日本のように十分に整備された交通網が豊富にある国は少数であることを実感します。
また、学校や病院についても良質なサービスを全国均一の質で提供される国も少数であることを実感します。 財政の効率化という観点からは、人口の多い、すなわち税収の多い地域の教育や医療の水準を高いレベルに維持することは可能であるものの、 そうではない地域のサービスは低下するように思います。しかし、日本の場合は地域によらず、良質な教育や医療、行政サービスを受けることができる点は、 国内どこにいても隠れたコストの節約につながっていると思います。



(2)隠れた金銭的便益を考える

 これまで隠れたコストの節約について述べました。日本の物価は、国際的には世界でもトップクラスといわれていますが、 十分に整備されたインフラや行政サービスという、見えない金銭的便益も加えて考える必要があると思います。
私が学生時代留学していた米国を例にすると、電車などが十分に整備されていない都市がほとんどであるため、 車を所有する必要があるうえ、移動時間も道路状況によって左右されることがあります。また医療については、 日本のような皆保険制度ではないため、高額な医療保険に自分で加入しなければならず、 医療サービスの質も医療保険の加入状況や医療機関によって大きく異なるのが実情です。
教育と所得についても学費は非常に高いのに対して、終身雇用制度ではないため所得が安定せず、 ローンだけが残る生活をしている人が多いと感じます。安全や治安については、広すぎる国土の治安を守るための警官の数が少ないうえ、 銃社会であることから、安全を得るためにも多くのコストを掛けなくてはならないのが実態だと思います。更に、 日本のようにディスカウントストアなどが存在しないため、食料品を除けば、地方都市でも意外に物価は安くないと感じていました。 このように、一見物価が安い国であったとしても、こうした隠れたコストを考慮した場合、 日本は決して物価の高い国ではないこと分かります。仕事柄海外出張することが多いのですが、 諸外国の人たちと交流を持つうえで彼らが必ず口にすることは、こうした隠れたコスト面の魅力についてであります。
ただ、日本の政策を見てみると、都市のポテンシャルや様々な分野における国際優位性を十分に引き出していないため、 海外からも十分に評価されていないように思います。また、移民の受入れに慎重なうえ、少子高齢化の影響で日本の総人口は減少傾向にあることから、 マーケットも限定されると考えられそうです。しかし日本の魅力が海外に知られ、移民の受入れなどが行われた場合には、 日本そのものの潜在的な評価が一気に表面化するとともに、不動産マーケットも活況を呈するものと考えることが出来ますし、 その余地は十分にあると考えています。


(3)法整備及び財産権の保護を含む取得コストを考える

 日本は法治国家として、法律の運用を厳格に行っており、十分法整備がなされている国であると思います。
また、原則として国内であれば同一の法律が適用されるうえ、不動産の所有権については国籍による差別なく保証されているのが日本の不動産の大きな魅力であると思います。 海外不動産取得の場合、権利関係の法律が複雑であることが多いことから、弁護士を雇う必要があり、そのコストは物件価格に対して非常に大きなものであると感じています。 また、固定資産税のような維持コストも日本のそれよりも高く、 日本のように東京などの一部都市で行われているような課税標準の特例などが無いのも海外不動産取得の大きな特徴だと思います。
更に、所有権については、中国や中東などは長期の借地権しか認められていないことから、永続的な財産として保有できないことも、 財産の保全という観点からはマイナスのように感じます。実際、日本の不動産においても借地権の物件の場合、 周辺相場よりも何割か安いことを考えれば、永続的な財産でないと十分な価値を持たないことが分かります。


(4)今後の経済動向から考えられる魅力

 超円高に加え、対GDP比の国債発行残高が先進国でも最悪の水準であることから、日本経済の将来を悲観する動きがあります。
不動産に対しても例外ではなく、 日本国債が暴落した場合、金利上昇に伴う価格下落が生じる可能性が指摘されています。
しかし、株式や不動産市場を含めたマーケットは、これまでのような国内の需要のみに左右されるのではなく、むしろ外国の動向により大きな影響を受けるといえます。 国債暴落に伴う金利上昇がクローズアップされていますが、もしこれによって日本が円安になった場合には、 外貨を基準とした場合に割安になった日本の不動産は非常に魅力的になります。
円高の現在においても、国際的に日本の不動産は利回りが高いうえ、先ほど述べたような隠れた価値が存在することから、 外国からの資金が日本の不動産に多く流れこみ始めています。グローバルな投資家は、常に投資対象を見つけなければならないため、 大量の資金を日本の不動産に投入することが考えられ、結果、不動産価格の下落を緩和する効果があるものと考えることが出来ます。 また、円安が進行した場合、輸出業をはじめ、日本経済に大きな恩恵をもたらすことも考えられることからも、 買い替え需要を中心として内需の不動産需要も拡大すると考えることが出来ます。


(5)その他の魅力

 日本の不動産の魅力として、目に見えない魅力があります。
それは、建物の建築技術に加えて、 地震大国である日本の建物は耐久性の面からも飛躍的に向上していると考えられる点です。 加えて、著名な建築家やデザイナーが多いことから、デザイン力もあり、非常に付加価値の高い建物やまちづくりが行われていると思います。 これは個人の住宅やマンションのような集合住宅においても、そのノウハウが反映されており、 快適な生活を送ることができるよう工夫される点が日本の不動産が持つ魅力のひとつであると思います。

まとめ


 これまで日本の不動産の魅力について述べましたが、ハード面、ソフト面の両方から見ても、 日本は表面的には見えない価値を多く有しており、現段階ではそれが潜在的な価値として存在していると思います。
また、政策面や経済面でも改善出来る余地は多く、各種施策を十分に行えば、これら隠れた価値を掘り起こすことが出来ると思いますし、 それは当然に不動産市場にも価格上昇という形で恩恵を受けることが出来ると思います。現在、アベノミクス効果で徐々に消費が上向いているにも関わらず、 経済動向については未だ悲観的観測も散見されています。しかし、不動産を含む日本そのものには、 まだ多くの分野で隠れて眠っている価値を掘り起こすチャンスは多く存在すると思いますし、 不動産市場も更に活況を呈するものと考えています。



※次回は、
「住宅取得の必要性について(実際の失敗事例をもとに)」についてコラムします! 江戸川 京介



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