「住宅購入のマーケットを考える」自分流投資戦略(第2回)・・・江戸川 京介

はじめに

 人と住まいの関係は、賃貸であれ、購入であれ、人生に必ず必要な結びつきがありますが、 国内需要の面から考えた場合、長引く不況に伴う所得の低下もあり住まいのコンパクト化、すなわち、広さや投入資金のコンパクト化(住宅を購入せず賃貸住宅を選択することも含む)が進んでいる傾向にあります。
また少子化によって将来の日本の人口減少が確実で、住宅購入需要が落ち込み、価格が下落するとの見方もあります。確かに日本に居住する日本国民の実需だけに限れば、このような理論も成り立つと思います。
 しかし、不動産の購入者はこれからグローバル化が進むと考えられることと、国内における実需(実際に居住する為の需要)も税制などの制度によって大きく変化すると考えられます。 また住宅に対する考え方やライフスタイルの変化といった要素によって新たな需要が生まれることも考えられます。 また、生活を切り詰めることに限界があるのと同様、住まいのコンパクト化の傾向もやがては限界が来ると考えています。

 かつては不動産(家)は地域に根ざして、子供や孫の代まで受け継ぐものでしたが、現在は生活に合わせて買い替えていく時代になりました。 しかし、ここで問題となったのが、買い替えの際に売却損が発生したり、オーバーローン(残債よりも売却額が低いこと)で売却が難しかったりという問題が発生してしまうことでした。 デフレが一番の原因ですが、アベノミクスでは何とかこのデフレから脱却して緩やかなインフレに持って行こうという方針で、今までのデフレ下の論理はひっくり返る可能性があります。 しかしマーケットリスクを認識しておくことは大事ですので私なりに整理をしてみました。

住宅に関係するマーケット

 住宅価格に影響を与えるマーケット環境はこれからどうなるのでしょうか。
ここでは(1)資金面、(2)需給面、(3)ニーズの変化、(4)品質向上と選択肢の増加という要素に分けて考えてみたいと思います。

(1)資金面

①金利面
 現在、長期にわたる金融緩和政策、超低金利政策が実行されています。 銀行も貸し倒れリスクが比較的少ない住宅ローンの顧客獲得競争に乗り出していることから、かつてない長期低金利ローンの商品が多くなっています。 しかし景気刺激策と社会保障費の増加で、日本はGDP比で世界一の負債を抱えていて、国債の買い手が減少した場合など、 将来的には金利上昇の可能性も考えておかなくてはなりません。その場合デフレから脱却していないと大変です。


②住宅取得を後押しする政策
 住宅取得を促進して経済を刺激するために、十分な頭金を準備することが難しい若者に住宅取得資金贈与の特例によって、 親などの世代から財産移転を容易にしたり、ローン減税や現在検討されている住宅取得に伴う現金給付といった特典などが住宅取得を後押ししている現状があり、 国の税金を使って強烈にバックアップしている状態です。これについてもいつかは縮小や廃止されることになると思いますが、 ①同様その時の姿はデフレから脱却して緩やかなインフレになっているというのが理想です。

(2)人口動向や世帯数から見た需給面について

 現在の日本は少子化で人口は減少する傾向にありますが、全国一律ではなく今後都市部に集約される流れが促進されると思います。 さらに将来には、都市部でも人口が減少すると考えられていますが、世帯数に目を転じてみると、核家族化の進行により当面は、 一定の戸数の住宅取得需要が発生するものと考えられます。具体的な動きを紹介すると、地方に居住する団塊層が都市部(地方都市の都市部を含む)への買換えをする動きや、 雪が多い地方では、除雪作業の負担が減るマンションへの住替えが進むなど、都市部については今後も一定の需要があると考えられます。


(3)住宅に関する考え方の変化

 かつては、一度建てた家は基本的には売ることなく、子供や孫に受け継がれていくものと考えられていたと思いますが、 最近では、生活の利便性などのニーズから、暮らしに合わせて買い換えるスタイルに変化していると考えています。 ニーズの変化で住宅が固定しないで流通する動きは、他の先進国を見ると国内で倍増してもおかしくないと思います。


(4)住宅の品質向上及び選択肢の増加

 (3)とも関連しますが、住まいとは、単なる生活の場ではなく、 自分のファッションやライフスタイルを主張するツールのひとつという考え方に変わっているように感じています。 そのような中、自分のスタイルで快適な生活が実現できるよう、住宅に様々な機能が求められるようになっています。 また基本性能として耐震構造やバリアフリーなどの品質の向上も求められています。更に都市開発が進展した地域では街の魅力も高まっています。 性能・機能で魅力ある新築物件が多数供給されることに刺激され買い替えが起こる、 一方中古物件はリノベーションで個性的な魅力付けを行うという動きが広まっています。 物件間の魅力付け競争が活発になって、住宅の質、機能が向上し、買いたい家が増えてくると考えることが出来ます。


(5)社宅や住宅手当の廃止

 かつて企業は土地神話によって、保有している不動産を担保に金融機関からお金を借りて事業を拡大していきました。 しかし、バブル経済崩壊以降デフレが進行するとともに、時価会計制度の導入や株主への情報公開強化の厳格化によって、 保有する不動産の売却を進めざるを得なくなりました。その一環で維持費がかかる社宅を手放す動きも加速しました。 また経費削減が進む中、住宅手当も縮小や廃止されてきました。公務員においても官舎の家賃を2倍に引き上げるなど動きが見られています。 これまでは、こうした社宅や住宅手当によって、転勤の多い現役世代が住宅を買わずに生活を維持することが出来たわけですが、 今後はこの層の人たちが住宅購入予備軍になると考えることが出来ます。

まとめ

 人口動向からこれからの国内需要(実際に住むために不動産を取得する人)を予測したものからは、将来的な住宅マーケットの縮小が想定されるものの、 住宅取得を促進する諸政策、人口減を打ち消す世帯数の増加、都市部居住の増加などの新たなニーズの増加、住宅性能の向上、 ライフスタイルの変化に伴う住宅の買い替え増加などが住宅価格を支えるものと考えることが出来ます。
 また静かに進んでいるグローバル化で外国人の居住ニーズが増加し、世界的に割安感のある日本の不動産に対する外国人の投資需要は今後拡大が予想されています。 特に、将来円安になった場合には、外国人による日本の不動産への投資意欲は一段と高まることが予想されます。
 政策として緩やかインフレがはっきりした目標となっています。まだ国民が半信半疑のところがありますが、 今の土地は上がらないという「逆土地神話」が終わる可能性も十分あります。国民がデフレ脱却を実感すれば、長期的に住宅価格に対する不安は解消されます。
 一つ話題ですが、中古として売却する場合の木造住宅の価格は、外国とは違い建物の評価が20年ほどでほぼゼロとされて来ましたが、 リフォームやメンテナンスをきちんとしてきた住宅の評価を変えようと国が動いています。

 将来における不動産の価格動向の予想は難しく、 ここに書きましたのはあくまで私の個人的な見解です。
住宅を購入される方の立場で考えれば現在は超低金利に加えて、住宅購入を後押しする各種制度の充実、住宅性能の向上、 選択肢の増加により大変恵まれていると言えることはまちがいないようです。



江戸川 京介



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