不動産所得の確定申告

 こんにちは、税理士の在間です。
今回は、不動産所得(賃貸アパート、賃貸ビル等の貸付による所得) の確定申告についてお伝えします。
不動産所得は、収入金額から必要経費を差し引いて計算します。

Ⅰ 収入金額

収入金額となるものは、次のようなものです。

①家賃収入
毎月借り主からもらう家賃です。
注意点としては、契約等により家賃支払日が定められている場合、その支払日の年分の収入となるということがあります (所得税基本通達36-5)。つまり、契約書で前家賃(毎月末日までに翌月分を支払う)となっている場合、平成26年1月分は平成25年12月中に支払を 受けることとなるため、平成25年分の収入金額となるわけです。(家賃が滞納等により未収となっている場合でも未収分は収入計上しなければなりません。 税務調査でよくチェックされます。)


ただし、以下の要件をすべて満たす場合、発生主義(上記の事例でいえば平成26年1月分は平成26年の収入金額とする経理処理)で計算できることとされています。


・帳簿書類を備えて継続的に取引を記録計算していること
・不動産貸付収入のすべてについて継続的に発生主義によった計算を行い、帳簿記録が行われていること
・前受収益、未収収益の明細書を確定申告書に添付していること

②礼金収入、更新料収入
アパート等で入居時に借り主からもらう礼金は入居時または契約時の収入金額となります。 契約更新の際に借り主からもらう更新料収入は更新時の収入金額となります。


③保証金償却等の収入
賃貸ビルなどで、「保証金の10%を償却して取得する」といったような文言で、保証金の一部を貸し主がもらうことになっている場合、 当該金額は不動産所得の収入金額となります。
問題は、いつの時点の収入金額となるかですが、これは、時の経過に関係なく返還しない金額=契約時 または入居時時の経過によって返還しないこととなる金額=返還しないこととなった時となります。


④その他注意点
借り主が退去する際に家賃や修繕費(借り主負担分)を敷金から差し引いて返金することがあります。 この場合、差し引いた家賃や借り主負担の修繕費は収入金額となるため注意が必要です。(これも税務調査でよくチェックされます。)


Ⅱ 必要経費

必要経費となるものは次のようなものです。

①固定資産税、火災保険料、修繕費
上記のもののうち、貸し付けている不動産に係るものは必要経費になります。ただし、2階建の建物の1階を自宅として使用し、 2階を貸している場合、1階と2階が同じ面積ならば建物の固定資産税の2分の1だけが必要経費になるといったような調整が必要となる場合があります。 (このような場合、貸付割合が50%という言い方をします。)
また、修繕費については、通常の維持管理に要するものは単年度の必要経費になりますが、 建物等の使用可能期間を延長させるものなどについては、資本的支出として下記②の減価償却の対象とされます。


②減価償却費
建物等の固定資産については、その取得価額を一時の経費とはせず、複数年にわたって経費化していくこととされています。 具体的にはその資産について決められた耐用年数に応じた償却率を取得価額に乗じて計算します。

(例・・定額法採用の場合)
【木造建物】 取得価額 10,000,000円  耐用年数 22年  定額法償却率 0.046
10,000,000円 × 0.046 = 460,000円 (1年分の減価償却費)

上記①の事例のように貸付割合が50%であった場合、
460,000円 × 50% = 230,000円 が1年分の減価償却費となります。


③借入金利子
貸し付けている不動産の取得のために要した借入金利子は必要経費になります。
上記①で説明した貸付割合による調整が必要な場合もあります。 また、新規に不動産貸付を開始した場合(前年まで不動産所得がなかった場合)には、 事業開始前までに要した借入金利子は土地や建物の取得価額とされますので、要注意です。


Ⅲ 青色申告

 正規の簿記の原則に従った帳簿整理を行っている場合、青色申告の承認申請をその年の3月15日まで (その年の1月16日以降に新規に事業開始した場合は開始日から2ヶ月以内)に行って税務署長の承認を受ければ 青色申告を行うことができます。
「正規の簿記の原則」というと難しそうですが、 市販の青色申告向けのソフトで経理処理すればよろしいかと思います。

 青色申告には多くの税制上の特典がありますが、最も価値が大きいのは純損失の繰越控除が できる点だと思います。
新規開業時や入居者が集まらなかった年など赤字申告を余儀なくされることもあるかと思います。 その場合、損失を翌年以降に繰り越せる(選択で前年に繰り戻せる)特典は非常に助かるものです。
紙幅の関係上、詳細には説明できませんが、その他にも以下のような特典があります。

・青色事業専従者給与の必要経費算入(生計同一親族への給与の経費算入)
・青色申告特別控除(10万円または65万円を所得から控除)
・小規模事業者の現金主義による計算



いかがでしたでしょうか。
毎年確定申告時期は憂鬱だ、という方も多いかと思います。
早めの準備を心がけて頑張ってください。



  執筆者
  在間 真太郎(ざいま しんたろう)
  1963年生 50歳
  1986年中央大学商学部卒業後、小沢公認会計士事務所入所。
  1989年税理士試験合格、現在に至る。
  資産税案件、相続税案件を多数手掛ける。


お役立ち不動産コラム



ご相談など、お気軽にお問い合せください。

お問い合わせボタン